ここは前節の「脳裏に焼き付いた残像」と逆の話になるが、先ほど書いたように結構必要以上に残像が残り、それに影響される事があるのだから、今度は逆にそれを利用しないといけない。相手に意識させるという事に徹するならば、ポイントを失ってでもいい場面で行う必要がある。そうなると当然ゲームの序盤という事になる。1ゲーム目とか2ゲーム目に相手に何を意識させたいかという事を考えておく必要がある。これはプレーヤーの特徴によって違うので一口では表現できない。
ただ言えるとしたら中盤以降に決め球を生かすための捨て石とか基本的にゲームを組み立てる上で相手にやられると困る事に対してそれをやられないための捨て石とか。
例えばセカンドレシーブは常にミドルをついていくが、ここという場面でクロスに打ってエース級のレシーブをしたいとか。ミドルを毎回ついていると相手の後衛がだんだんとミドルをケアするようになり、場合によってはこちらがレシーブする前にミドルよりにポジションをとったりする。そうしたら意識の薄いクロスへのレシーブがかなり有効になるだろう。
ファーストサーブもミドルに打ち続けていると、ここという時にサイドに打つとかなり効果がある。
また別の例としてトップ打ちでミドルをつきたい場合、最初の1発目は前衛サイドにトップ打ちで抜きに行く。これを前衛にボレーされてポイントされてもいい。相手の前衛にその印象さえ植え付ければ、同じような場面になると相手の前衛はサイドを守り、ミドルをトップで抜き易くなる。
以上は多くの場合というだけであり、逆の考え方もあるだろう。最初にクロスにしぼってそれを見せ玉にし、あとはミドルをついていくとか。
しかしそういう事も相手が一枚も二枚も上の場合は、そのような事に惑わされず、効果がない時もあるだろう。
あと場面という意味では7ゲームマッチの場合は3-2でリードしていて6ゲーム目を相手に取られそうな時は思い切って6ゲーム目を捨てて、ファイナルゲームで活かしたいボールのために相手にポイントをやってもいいから印象付けるためのボールを打っておくという手もある。
以上のように書いてきたが、もう一つ大事な事がある。それは、どこに打つにしても同じフォームで打つという事である。フォームで打つ方向が相手にわかってしまうようでは、全く意味がない。常に前衛のサイドを抜けるようなフォームからミドルやクロスに絞るのか、または逆にするのかは人それぞれだと思うが、フォームは常に同じじゃないといけない。
これも、その裏をかく、ということもあり、わざとサイドに打つよぉ~、という構えから前衛がサイドを守ったらセンターを打つとかクロスに絞ってエースをねらうとか、いろいろなパターンがあり、結局のところ正解はないと思うのだが、要は将棋のように何ポイントか先に自分がどのようにポイントしたいのか、ということから逆算して、今相手にどのような残像を残しておくのかを考えないといけない、ということだ。